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犬の診療

頻繁に遭遇する犬の疾患には一定の傾向があります。器官系ごとに疾患をまとめたとき、犬の場合、皮膚疾患が一番多く、次に消化器疾患、疾患という順に、その遭遇頻度には差があります。また、それぞれの器官系疾患の中で遭遇する頻度に注目したとき、犬の皮膚疾患の中では、膿皮症・細菌性皮膚炎が多く、続いてアレルギー性皮膚炎、皮膚腫瘍となります。

犬の日常診療においては、このような犬の疾患の発生頻度以外に、患者情報(品種、年齢、性別など)、稟告、現病歴・既往歴、身体検査などの様々な情報から鑑別診断リストを作成し、目的をもって各種検査を行い、確定診断(時に仮診断)後に、治療法を選択していきます。

近年、動物の生活環境の向上や、動物医療機器ならびに診断技術の進歩により、犬の寿命は著しく延び、高齢犬ならではの疾患も多くなりました。愛犬に対する日常管理、調子の悪さに早く気づく観察力など、犬の診療において、これまで以上にご家族の協力が不可欠となってきています。

1. 皮膚疾患

膿皮症

代表的な犬の皮膚細菌感染症で、表面性・表在性・深在性の3つに分類されます。膿皮症の多くは、様々な他疾患に続発して起こります。

円形の脱毛・色素沈着とその周囲に痂皮の形成を伴う表皮小環
円形の脱毛・色素沈着とその周囲に痂皮の形成を伴う表皮小環

好中球のブドウ球菌貪食像
好中球のブドウ球菌貪食像

ノミアレルギー性皮膚炎(ノミ刺咬過敏症)

ノミの刺咬の繰り返しにより、ノミの唾液タンパク質に対して感受性を持ち、発症します。

ノミアレルギーによる腹部の皮膚炎
ノミアレルギーによる腹部の皮膚炎

2. 消化器疾患

細菌性腸炎

毒素産生性Clostridium perfringensが芽胞を形成するときに、毒素を産生し、その毒素によって腸上皮が障害され、腸炎が引き起こされます。

糞便中の芽胞形成菌
糞便中の芽胞形成菌

3. 耳疾患

外耳炎

外耳道における急性あるいは慢性の炎症性疾患で、一般的にはマラセチアや細菌などが原因で起こりますが、アレルギーをはじめ様々な因子が外耳炎発生に関与しています。

外耳炎を呈した耳垢中のマラセチア
外耳炎を呈した耳垢中のマラセチア

4. 筋骨格疾患

前十字靭帯断裂

前十字靭帯の部分・完全断裂、半月板損傷により、さまざまな程度の後肢跛行を呈する最も一般的な運動器疾患であるが、その病因および機序については未解明な部分が多いとされています。

脛骨の前方変位が認められた後肢の単純X線側面像
脛骨の前方変位が認められた後肢の単純X線側面像

5. 眼の疾患

白内障

白内障は水晶体嚢や実質に生じた混濁のことをいい、一般的に加齢とともに緩徐に進行しますが、遺伝性白内障は若くして発症し、速く進行します。

水晶体タンパク質が液化し、融解した白内障(過熟期)
水晶体タンパク質が液化し、融解した白内障(過熟期)

6. 泌尿器疾患

尿石症(膀胱)

尿石は尿路(腎盂、尿管、膀胱、尿道)に存在しており、一般的には食事内容、水分摂取量の減少、尿pHの変化、尿うっ滞などをリスクファクターとして、結晶が形成され、凝集し、尿石を形成します。

リン酸マグネシウム・アンモニウムとシュウ酸カルシウムの膀胱結石
リン酸マグネシウム・アンモニウムとシュウ酸カルシウムの膀胱結石

7. 腫瘍疾患

乳腺腫瘍

乳腺腫瘍は雌犬で一番発生の多い腫瘍です。不妊手術には、犬の乳腺腫瘍の予防効果があり、初回発情前に不妊手術を行うと99.5%の予防効果が期待できるとの報告があります。乳腺腫瘍の治療には外科手術が必要となりますが、手術侵襲の高い手術であるため、早期不妊手術による予防が重要です。

乳腺良性混合腫瘍と乳腺複合腺腫と乳腺悪性混合腫瘍
乳腺良性混合腫瘍と乳腺複合腺腫と乳腺悪性混合腫瘍

8. 肝・胆・膵疾患

胆嚢粘液嚢腫

胆嚢内に不動性物質が大量に貯留し、胆嚢が拡張する病態で、拡張が重度になると、胆嚢壁の血流灌流が不十分となり、壁が壊死・破裂し、胆汁性腹膜炎を引き起こします。

胆嚢粘液嚢腫を発症した胆嚢内に認められた不動性のゼリー状物
胆嚢粘液嚢腫を発症した胆嚢内に認められた不動性のゼリー状物

9. 歯・口腔疾患

歯周病

歯の表面に付着している歯垢中の歯周病関連細菌が原因で、歯の周囲組織が炎症を起こす疾患で、歯肉、歯根膜、セメント質および歯槽骨の歯周組織まで炎症が波及することが多く、歯肉炎と歯周炎を総称して歯周病といいます。

歯垢・歯石の付着、歯肉の退縮・発赤・腫脹
歯垢・歯石の付着、歯肉の退縮・発赤・腫脹

10. 循環器疾患

詳しくは心臓病の診療へ

僧帽弁閉鎖不全症

左心房と左心室の間にある僧帽弁が加齢などにより厚くなったり変形して、うまく閉じられなく疾患で、血液の逆流が生じ、進行すると心不全徴候を呈します。

左心房内に認められた血液の逆流(僧帽弁逆流)
左心房内に認められた血液の逆流(僧帽弁逆流)

11. 呼吸器疾患

気管虚脱

遺伝的素因、高温多湿、圧迫、気道内圧の上昇、肥満などを誘発要因として、気管軟骨が弱くなったり、膜性壁が伸びることで気管内腔が扁平化し、咳や呼吸困難を呈します。

吸気時にしっかりと認められた胸部気管と後葉気管支
吸気時にしっかりと認められた胸部気管と後葉気管支

呼気時に狭窄が認められた胸部気管と後葉気管支
呼気時に狭窄が認められた胸部気管と後葉気管支

12. 神経疾患

水頭症

脳室内あるいはクモ膜下腔に脳脊髄液が過剰に貯留し、頭蓋内圧が上昇することによって、意識レベル・認知機能の低下、視覚障害、旋回運動、てんかん発作などの徴候を呈します。

経頭蓋超音波検査による脳室-大脳比は48%で重度の脳室拡大
経頭蓋超音波検査による脳室-大脳比は48%で重度の脳室拡大
脳底動脈血管抵抗指数は0.73

13. 生殖器疾患

子宮蓄膿症

中齢から高齢の不妊手術をしていない雌犬がかかる疾患で、子宮内に膿がたまることで起こります。外陰部から血様や膿状の排泄物が認められて気づいたり、子宮が拡張し、お腹がふくらむことで気づくこともあります。

内部に大量の膿が貯留し、拡張した子宮
内部に大量の膿が貯留し、拡張した子宮

14. 内分泌疾患

クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)

ホルモン異常の疾患で、副腎からコルチゾールというホルモンが持続的に過剰に出ることで、多飲、多尿、多食、脱毛、皮膚の菲薄化、筋肉の脆弱化、腹部膨満などが認められます。

腹部の薄い皮膚の下に透けてみえる血管(皮膚の菲薄化)
腹部の薄い皮膚の下に透けてみえる血管(皮膚の菲薄化)

15. 血液・免疫疾患

播種性血管内凝固(DIC)

悪性腫瘍、炎症、重度感染症、熱中症など様々な疾患が原因で、血液の凝固が異常になり、小さい血栓を形成し、血小板を過剰消費することで血が止まらなくなる疾患で、全身に出血や紫斑が認められ、多臓器不全になることもあります。

腹部に認められた紫斑
腹部に認められた紫斑

ガルシア動物病院

〒135-0053
東京都江東区辰巳2-1-56

TEL 03-5534-0306

(診療時間内)

●診療時間

午前 : 9時 ~ 12時
受付時間:
再診の方は11時30分まで
初診の方は11時まで

午後 : 5時 ~ 8時
受付時間:
再診の方は7時30分まで
初診の方は7時まで

受付締切時間ぎりぎりでの来院はご遠慮ください。
昼からの手術・検査の開始遅延等の問題が生じる場合、受付締切時間内であっても診察をお断りする場合がございます。

●診療対象動物

犬、猫